木皿 泉。 木皿泉 おすすめランキング (91作品)

木皿泉

木皿 泉

私がこのドラマに出会ったのは、人生のどん底にいるときでした。 職を失い、自分ではどうしようもない理由で結婚が破断になり、婚約者と別れることになった直後にこのドラマと出会ったのです。 時間だけは腐るほどあったので、TSUTAYAでDVDをまとめ借りして観たのですが、一気に引き込まれて、残りの話数が少なくなるごとに寂しい気持ちになり、惜しむように鑑賞していたのを覚えています。 脚本は木皿泉。 木皿泉は和泉務、妻鹿年季子夫妻の共作ペンネームで、代表作はこの『すいか』以外に『野ブタ。 をプロデュース』、『Q10』、『昨夜のカレー、明日のパン』があります。 この『すいか』、放映当時 2003年 は視聴率が低迷したのですが、作品への評価は高く、放映終了後数々の賞を受賞し、今でも多くのファンを持つ珍しい作品です。 主人公は小林聡美演じる信金職員、早川基子、34歳。 実家暮らしの独身。 彼女は唯一一緒にお昼ご飯を食べる仲だった同僚、馬場万里子が横領事件を起こしたことから、自分の人生を見つめなおすようになり、実家を出てハピネス三茶という下宿に身を寄せることになります。 このハピネス三茶。 住人は女性ばかりで個性派揃い。 それぞれが人生に悩みや傷を抱えているのですが、適度な距離感で主人公に関わり、物語は展開していきます。 この『すいか』に限らず、木皿泉作品はどれもとても温かい視点で人が描かれています。 セリフのひとつひとつに優しさやおかしみ、愛情があり、それが観るものにじんわりと伝わるので、心に傷を持つ人間には特に響くのです。 「ああ、同じような悲しみや疑問を持つ人は他にもいるんだ。 理解して包み込んでくれる人がいるんだ」と、安心感が得られるのです。 好きなシーンは無数にあるのですが、ひとつ例を挙げると、ハピネス三茶の住人売れないエロ漫画家の絆が、ひょんなことで知り合った若者響一と近所の学校のプールを見に行くシーンです。 この日、響一は失恋をしたのですが、絆は直接的な言葉ではなく、プールの水の入れ換えを一緒に見ることで響一を励ますのです。 「水換える日は、必ず来るのよ、私。 水がね、いっぺん空になって、またいっぱいになるのが好きなの」 「それ、ずっと見てるんですか?」 「うん。 ずっと見てる。 日暮れまで、ずっと」 「へんな人だな」 「人も、こんなふうに、中身全部出して、新しいの入れる事が出来たらいいのにね…って思ったりして」 「…」 「忘れられなくて、いつまでもひっかかって、前行けないの、バカ過ぎるよね。 頭では、判ってんだけど。 これがなかなかねぇ」 特にストーリーとは大きく関係しないシーンなのですが、絆の言葉がとても胸に沁みて、自然と涙があふれました。 主人公基子がハピネス三茶の管理人ゆかと、住人である大学教授夏子の3人でバーで飲むシーンも心に残っています。 現在の所持金が83円という絆の話題をしているシーンです。 「じゃ、どうやって暮らしてゆくの? たった83円で!」 「それが不思議なんですよねぇ。 まあ、うちでツケで食べてますけど、その他はどうしてるのか。 誰かに頼むってタイプでもないですし、謎ですよねぇ」 「!」 「アナタ、この世に、そんな女が居るとは信じられないって思いましたね。 今」 「はぁ」 「それは違います。 色々、居ていいんです」 「私みたいな者も、居ていいんでしょうか?」 「居てよしッ!」 自分を否定され、居場所も愛する人も失い、人生のどん底にいた私。 そんな私に、教授のほんの短い言葉がどれほど突き刺さったことでしょう。 力強い「居てよしッ!」という言葉は、まるで自分に投げ掛けられたかのようでした。 ぽろぽろ涙を流しながら、大きな何かに救われていくような気持ちで、私はこのドラマを観ていました。 このように、『すいか』は小さなシーンのひとつずつが、誰かの心に一生残るような名場面になっているのです。 このドラマに救われた人は、この世の中にたくさんいると思います。 だからこそ放映から長い時間がたった今も根強い人気があるのだと思います。 放映から10年後の2013年に出版された文庫版のシナリオ本には、おまけで10年後のハピネス三茶の住人が描かれています。 こちらもほろっとくる温かい話に仕上がっています。 もし今ここを読んでいるあなたが逃げ場のない悲しみや苦しみに襲われているとしたら…ぜひ『すいか』を観てほしいです。 ハピネス三茶に自分の居場所を作ってもらったような気持ちになって、きっと心が軽くなるはずです。

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木皿泉 おすすめランキング (91作品)

木皿 泉

「木皿泉」はともに脚本家である和泉務・妻鹿年季子夫妻の共同ペンネームです。 1990年に放送された『やっぱり猫が好き』の脚本で共作をはじめた二人は、代表作『すいか』を書き上げた後に和泉が脳出血を起こして倒れ、生死の境をさまよったことをきっかけに結婚。 公私ともにパートナーとなりました。 以降『野ブタ。 をプロデュース』『セクシーボイスアンドロボ』『Q10』など人気ドラマの脚本を次々に手掛け、ヒットさせたことで知られる実力派の脚本家です。 2013年には初の小説『昨夜のカレー、明日のパン』を発表し、小説家デビューに至ります。 同作はデビュー作にして本屋大賞2位にランクインしたことで話題となり、実写ドラマ化も成功しました。 今回は夫婦二人三脚で活躍を続ける脚本家兼小説家、木皿泉のおすすめ5作品をご紹介します。 「パンの焼ける匂いは、これ以上ないほどの幸せの匂いだった。 店員が包むパンの皮がパリンパリンと音をたてたのを聞いてテツコとギフは思わず微笑んだ。 たった二斤のパンは、生きた猫を抱いた時のように温かく、二人はかわりばんこにパンを抱いて帰った。 」 『昨日のカレー、明日のパン』より引用 上記引用は恋人に結婚を申し込まれたものの乗り気になれないでいるテツコが、ギフとの会話の中で一樹が入院していた頃の記憶を思い出すシーンでの一段落です。 彼女はかつて一樹の死が差し迫った夜のパン屋で、悲しいのに幸せな気持ちにもなれるということを知ったのでした。 大切な人を失っても続いていく遺された者たちの日々。 テツコとギフを含め、それぞれに問題を抱える登場人物たちは一樹が遺したあたたかい人間関係の中で自分を見つめ直し、ゆっくりと成長していきます。 木皿泉の持ち味であるその豊かな表現力で前向きに生きる人々の姿が美しく描かれた優しい本です。 ぜひ読んでみてください。 伝説的なドラマのシナリオ本『すいか』 主人公は信用金庫に勤めるOL、早川基子。 34歳の彼女は結婚しておらず、親離れも出来ずに平凡な日々を暮らしていました。 しかしそんなある日、同期の馬場ちゃんが3億円を横領していたことが発覚し、逃走を図ったことから物語がはじまります。 基子は馬場ちゃんが起こした事件を機に依存状態にあった母との決別を決め、下宿屋「ハピネス三茶」に転がり込みます。 そこで出会ったのはエロ漫画家の亀山絆や大学教授の崎谷夏子、スリランカに行った父の代理で大家を務める女子高生の芝本ゆかなど個性豊かな同居人たち。 他愛ない日常のシーンに散りばめられた登場人物の台詞にはジンとくるものも多く、台本形式で書かれた本書からは彼らとの交流によって徐々に変化していく基子の姿が見受けられます。 笑えて泣けて考えさせられて、最後には素晴らしい読後感を味わえる傑作。 脚本家木皿泉の地力を感じます。 疲れた時に是非読んでほしい、人生の夏休みみたいな物語です。 2人のルーツに迫る『木皿食堂』 本書の前半を占めている、神戸新聞に連載されたエッセイ「木皿食堂」のテーマは「食べる」です。 脚本と同様に和泉務が各回のテーマを決め、妻鹿年季子が執筆するスタイルをとっての連載とのことですが、彼らの食に対する価値観がそのまま作品に反映されているように見受けられるため、非常に興味深い内容となっています。 「食は、自分が育った家のみっともない、恥ずかしい面、よそとは違うぶさいくなことと分かちがたく結びついてるし、時にはすごく切実やから。 」 『木皿食堂』より引用 エッセイ連載一周年を迎えてのインタビューで、和泉務はこう語っています。 木皿泉が描く物語の登場人物は私たちと同様に、皆どこかしら弱い部分や、自分では変えることのできないどうしようもない部分を持ち、時にはそれに悩んでいます。 そんなリアルな人間らしさを魅力的に描く彼らの手腕は素晴らしいドラマを生み続けていますが、本書で語られる食に対する価値観こそが、彼らのルーツと呼べるものなのではないでしょうか。 知れば、作品がさらに面白くなります。 読後、木皿泉作品を見返したくなること間違いなしの1冊です。 「僕が恋した転校生は、ロボットだった。 」のキャッチコピー通り、この作品は恋愛ものです。 そのテーマは間違いなく「愛」それも究極愛だと思います。 ロボットと人間の恋というSF風味な設定ですが、木皿泉の手にかかればロボットにも人の心が宿り、彼女が発する純粋で切実な思いのこもった台詞は平太の心のみならず、読者の心をも動かします。 また彼らを取り巻く人々にも人間味溢れる魅力的なキャラクターが多数登場し、名台詞が多いことで知られる本作ですので、台本形式で書かれた本書を読めばきっとドラマを観たくなるはず。 2人の恋は周囲を巻き込みながら進み、やがてQ10がやってきた理由に迫る、壮大なストーリーが展開されていきます。 かわいらしい2人のやりとり。 心温まるストーリー。 そして、涙なしでは見られないラスト。 彼らが出会ったことは重要な意味を持つことだと、木皿泉は教えてくれます。 ぜひ、この究極的な恋の行方を、自分の目で見届けてください。 切なく愛おしい1作です。 大ヒット学園ドラマ『野ブタ。 をプロデュースシナリオBOOK』 原作では男子であった野ブタは木皿泉の希望で女子に変更されています。 またストーリー展開や登場人物の設定も原作とは大きく異なりますが、木皿泉の手腕により原作の良さを壊すことなく、物語は希望の持てるラストへと向かいます。 この作品は、単なる青春ドラマではありません。 軽いノリと疾走感のあるストーリー展開で楽しく観られる作品ではありますが、舞台は教室、題材は「いじめ」です。 登場人物は皆それぞれに悩みや問題を抱えていますが、木皿泉はそれを繊細な表現力で的確に描写することで彼らの発言に深みを持たせています。 読者は教室という閉鎖的な空間で織りなされ変化していく人間関係を前に、様々な思いを抱くことでしょう。 彼らが交わすたくさんの言葉は、私たちに周囲を大切にすることは自分を大切にすることだと改めて気付かせてくれます。 人間関係に悩みを抱えた時に是非、読んで頂きたい作品です。 いかがでしたでしょうか。 夫婦二人三脚で素晴らしい作品を生み出し続ける木皿泉。 彼らが懸命に描くドラマは、人生に役立つ大切なことを教えてくれます。 ぜひ読んでみてください。

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木皿泉 おすすめランキング (91作品)

木皿 泉

私がこのドラマに出会ったのは、人生のどん底にいるときでした。 職を失い、自分ではどうしようもない理由で結婚が破断になり、婚約者と別れることになった直後にこのドラマと出会ったのです。 時間だけは腐るほどあったので、TSUTAYAでDVDをまとめ借りして観たのですが、一気に引き込まれて、残りの話数が少なくなるごとに寂しい気持ちになり、惜しむように鑑賞していたのを覚えています。 脚本は木皿泉。 木皿泉は和泉務、妻鹿年季子夫妻の共作ペンネームで、代表作はこの『すいか』以外に『野ブタ。 をプロデュース』、『Q10』、『昨夜のカレー、明日のパン』があります。 この『すいか』、放映当時 2003年 は視聴率が低迷したのですが、作品への評価は高く、放映終了後数々の賞を受賞し、今でも多くのファンを持つ珍しい作品です。 主人公は小林聡美演じる信金職員、早川基子、34歳。 実家暮らしの独身。 彼女は唯一一緒にお昼ご飯を食べる仲だった同僚、馬場万里子が横領事件を起こしたことから、自分の人生を見つめなおすようになり、実家を出てハピネス三茶という下宿に身を寄せることになります。 このハピネス三茶。 住人は女性ばかりで個性派揃い。 それぞれが人生に悩みや傷を抱えているのですが、適度な距離感で主人公に関わり、物語は展開していきます。 この『すいか』に限らず、木皿泉作品はどれもとても温かい視点で人が描かれています。 セリフのひとつひとつに優しさやおかしみ、愛情があり、それが観るものにじんわりと伝わるので、心に傷を持つ人間には特に響くのです。 「ああ、同じような悲しみや疑問を持つ人は他にもいるんだ。 理解して包み込んでくれる人がいるんだ」と、安心感が得られるのです。 好きなシーンは無数にあるのですが、ひとつ例を挙げると、ハピネス三茶の住人売れないエロ漫画家の絆が、ひょんなことで知り合った若者響一と近所の学校のプールを見に行くシーンです。 この日、響一は失恋をしたのですが、絆は直接的な言葉ではなく、プールの水の入れ換えを一緒に見ることで響一を励ますのです。 「水換える日は、必ず来るのよ、私。 水がね、いっぺん空になって、またいっぱいになるのが好きなの」 「それ、ずっと見てるんですか?」 「うん。 ずっと見てる。 日暮れまで、ずっと」 「へんな人だな」 「人も、こんなふうに、中身全部出して、新しいの入れる事が出来たらいいのにね…って思ったりして」 「…」 「忘れられなくて、いつまでもひっかかって、前行けないの、バカ過ぎるよね。 頭では、判ってんだけど。 これがなかなかねぇ」 特にストーリーとは大きく関係しないシーンなのですが、絆の言葉がとても胸に沁みて、自然と涙があふれました。 主人公基子がハピネス三茶の管理人ゆかと、住人である大学教授夏子の3人でバーで飲むシーンも心に残っています。 現在の所持金が83円という絆の話題をしているシーンです。 「じゃ、どうやって暮らしてゆくの? たった83円で!」 「それが不思議なんですよねぇ。 まあ、うちでツケで食べてますけど、その他はどうしてるのか。 誰かに頼むってタイプでもないですし、謎ですよねぇ」 「!」 「アナタ、この世に、そんな女が居るとは信じられないって思いましたね。 今」 「はぁ」 「それは違います。 色々、居ていいんです」 「私みたいな者も、居ていいんでしょうか?」 「居てよしッ!」 自分を否定され、居場所も愛する人も失い、人生のどん底にいた私。 そんな私に、教授のほんの短い言葉がどれほど突き刺さったことでしょう。 力強い「居てよしッ!」という言葉は、まるで自分に投げ掛けられたかのようでした。 ぽろぽろ涙を流しながら、大きな何かに救われていくような気持ちで、私はこのドラマを観ていました。 このように、『すいか』は小さなシーンのひとつずつが、誰かの心に一生残るような名場面になっているのです。 このドラマに救われた人は、この世の中にたくさんいると思います。 だからこそ放映から長い時間がたった今も根強い人気があるのだと思います。 放映から10年後の2013年に出版された文庫版のシナリオ本には、おまけで10年後のハピネス三茶の住人が描かれています。 こちらもほろっとくる温かい話に仕上がっています。 もし今ここを読んでいるあなたが逃げ場のない悲しみや苦しみに襲われているとしたら…ぜひ『すいか』を観てほしいです。 ハピネス三茶に自分の居場所を作ってもらったような気持ちになって、きっと心が軽くなるはずです。

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